2017 / 12 / 10

2017年度 駒場祭レポート

こんにちは、デザイナーの山崎です。

11/24-26に開催された駒場祭にて、例年通りdesigning plus nineも団体として参加し、私はその企画責任者を務めさせていただきました。今回の記事では、駒場祭企画の振り返りをしていきたいと思います。

今年のテーマは「読む」

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私達が作品展示をする際には、テーマを設定し、そのテーマに関連した作品をチームで制作していきます。

最近では「シェア」「恋」「遊び」「食」……こういった、普段強くは意識しない事をテーマに設定し、スポットを当て、デザインしていきました。例えば昨年度の駒場祭では「シェア」をテーマに、写真を取りたくなるようなテーブルクロスやフォトプロップの作成であったり、人と共有して使いたくなるようなアイコンの配布をしたりしました。

今回も駒場祭に向け、はじめにテーマを考えました。昨年から始めたカフェの枠組みから発想を膨らませました。一切制約は設けず、メンバーの中から浮かび上がった五十を超えるアイデアを、いろいろこね回し、時には広い言葉でまとめ、時にはアイデアを深め、最終的に数個のテーマまでに絞り込みました。メンバー内での議論・話したいの結果、選ばれたのは「読む」でした。

ここで「読む」とは、「視覚から主に文字などによって情報を得ること。ただし、デザインによる課題解決の手段としては視覚に限らない」。ちょっと堅い表現での定義になっていしまいました。が、ここで意識したのは、「読む」といったときに「本を読む」に限らないようにすること。そう限ってしまうと、発想の広がりが乏しくなってつまらない展示になってしまいますからね。

この「読む」から発想を膨らませて、幾つか読むに関する課題を設定、それをデザインによって解決できるような作品を、メンバーでグループになり制作していきました。

駒場祭前日まで

テーマを「読む」に決定してから、本格的に準備開始。今回の駒場祭では新しい試みとして、やることを展示作品の制作・展示運営の準備の2つに大きく分け、それぞれについてまたいくつかのチームに分かれて準備にあたりました。各メンバーには作品制作と運営準備の両方に関わってもらい、作業を進めていきました。

さて、私達は駒場祭にてカフェ形式での展示を採用しました。素直に展示をするのに比べて手間のかかるカフェ形式の展示をなぜ採用するのか。そこには デザインを体験する空間としてのカフェ という効果を狙っていることが理由に挙げられます。ただ展示を見に来てもらうのではなく、更に一歩深く、体験するというフェーズに昇華していただければという期待がありました。

作品展示だけでなく、カフェ運営という双方に対して力を注がなければならないのは、非常にコストの掛かるものでした。カフェに於いても単にコーヒーを販売するのではなく、コーヒーは豆を選びハンドドリップで淹れ、テーブルや椅子など店内にも装飾を施し、空間を作り上げるように計画し、実行しました。

作品展示も進めていきましたが、作りたいものを作るのではなく、課題解決という視座から作品に落とし込んでいくdp9らしい作品作りは、プロジェクトによっては難航しました。時にはいろいろな人から意見を求め、駒場祭直前までメンバーはものづくりに励んでいきました。

CAFE "Read me" @駒場祭

なんとか作品たちを展示にこぎつけ、普段は教室として使われる部屋全体に装飾を施し(いくばくかの緑と、なんとソファまで用意!)、手作りのカウンターと仕入れたばかりの豆やコーヒー用具を揃え、慌ただしくも準備が整いました。こうして、「CAFE "Read me"」は駒場祭中にOPENしました。

コーヒーは、モカとキリマンジャロ、そして一日限定30杯の最高級豆・ゲイシャを用意。どのコーヒーも好評を頂いて、特にゲイシャを召し上がったお客様からは驚きの声を頂きました。喫茶店としての一面もあったために、中には3時間ほど滞在してくださった方もいらっしゃいました。

ところで「CAFE "Read me"」というのは私達の店名なのですが、そこには、ソフトウェアの取扱説明書でしばしば見かける"README"の捩りであり、作品たちが「私達を視て」(或いは、読んで)と呼びかけている、そんな意味が込められています。そのCAFE "Read me"を彩った作品たちを、簡単に振り返っていきます。

1.全体企画:みんなの読む

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読むっていう表現にも色々な意味があるよね。メンバーがそれぞれ思いついた「○○を読む」をはがき一枚の作品にしてみました。読む=本を読む、そういった先入観をほぐしたいというところが出発点。

2.WikiBook

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本を読むにも、話が長いと読書が苦手な人は途中で挫折してしまう…… そんな経験のある方もいるんじゃないでしょうか? この作品は、そういったメンバーが中心となって、どうやったら苦手でも本を読めるのか、という考えから生まれました。

参考にしたのはフリー百科事典・Wikipedia。あらすじだけを記述したWebページを作成し、各単語から別のページへとリンクを張り巡らせる形を取りました。たとえば、桃太郎の話なら、桃太郎、もも、鬼といった単語から、自分の気になる単語のリンクを踏んでより深く知っていく…… 当日はデモを用意して来てくださった方に体験してもらいました。

3.Read to Chat

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話題が途切れて、ちょっと気まずい雰囲気になって、なんとなくスマホを弄ってSNSやニュースを読んでしまう。その読んでしまうを、コミュニケーションに繋げられればいいんじゃないか、そんなアイディアをもとに作品にしました。二枚の板に書かれた不完全な文書…… 二人で協力して読んで初めて意味をなします。いくつかのパターンを用意しました。

4.読むを読む

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「読む」という単語を深く掘り下げて、それを小さなグラフィックに作品として落とし込んだのがこの展示です。サバを読む、文脈を読む、年輪を読む、QRコードを読む…… いくつもの作品が作品群として並ぶ展示は、それだけで小さな美術展のようでした。手作りのパネルでめくる動きは、面白い展示方法だったと思います。

5.ブックカバー企画

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ブックカバーでもおしゃれなものがいい、思わず持ちたくなるようなブックカバーは作れないか? そんな考えをもとに作品にしたのが当企画。ジーンズパンツを加工してできたおしゃれなブックカバーは、当日販売もありました! また、東京大学創文会様とコラボし、駒場祭で出された文集の特製ブックカバーも作らせていただきました。

6.フリーペーパーコラボ企画

東大女子のためのフリーペーパーを作成しているbiscUiT様と対談し、その内容をフリーペーパーとしてデザインを仕上げ、駒場祭で配布させていただきました。

7.Cheese

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メールという媒体だと感情が読み取れないこともある、微妙なニュアンスが伝わらず誤解を生じてしまう…… そんな考えから思考を巡らせて、たどり着いたのは、笑顔でメールを送るサービス。冷たい印象を与えがちなメールでは、フランクな雰囲気が伝わりにくいもの。笑顔を検知してメールを送信するこのサービスを使えば、相手にも柔らかい印象がつたわるのでは。当日は機材の関係でほんの少ししかデモをお見せできなかったのは残念でした。

まとめとこれから

2017年度のdp9としては、少ない作品展示の機会でしたが、メンバーたちがそれぞれ力を発揮し、良い駒場祭展示になったと思います。カフェでお客さんにデザインを体験してもらいたい、という点はうまくワークしたのではないでしょうか。

2018年度は五月祭を無事に終え、駒場祭にもdp9は参加予定なのでお楽しみに!